遺影のある家
遺影のある家に行くと
線香の良い匂いがして
羊羹を一口食べた
奥さんがずっと昔からのように
右手で左手を触っている
側では子どもたちが
わたしの名前を知っているので
窓から外を見ると
表面の固い道路や他のものなどが
薄っすらとしていた
それらは懐かしい、というよりも
何か買ってあげたい気持ちに近いから
放っておけば溶けて
なくなりそうな気がする
名前を覚えている人は
必ずいつか死んでしまうし
覚えてない人も今頃はどこかで
生きてないかもしれない
奥さんが食べ残した羊羹を
包んでくれている
また手を合わせて
降り始めた、多分あのにわか雨を
わたしは通って行くのだろう