タイゲーム
新宿の雑踏に陽が差し込むころ
もう少し空気の言葉で話がしたい
自動販売機の隣で人を待つ人のように
母が持っていた日傘のことを思い出し
もう日傘がいらないことも
併せて思い出した
緩やかな坂の途中なのに
このような街中にも
水面があるなんて知らなかった
汗ばんだ骨格
好きな文字の跡かた
風が吹くと穏やかにさざめき
やってきた審判の
会えてよかった、という一言で
昨晩の試合が引き分けに終わったことも
初めて知った
雪掻きが必要な朝
ミシン目に沿って切り取った
紙の形のようなものを
いつか乗るはずだった列車の
網棚に忘れてきてしまった
横断歩道から落下しないように
等しくなるところを探すけれど
それでも
途絶えていくもの
閉ざされていくもの
そして生きるために
手に握りしめているもの
※ wc.さんとの即興詩企画に投稿したもの
出題者 wc.さん
お題 タイゲーム