余白
書き損じた天気図の余白に
僕らは昨夜見た偽物の夢を書き続ける
筆圧があまりに強いものだから
明日見る予定の夢まで記してしまう
つけ放したラジオから聞こえる
ネジが酸化していく音
その向こうには三番線のホームがあって
列車が湿っている
僕らは手を動かし
手は動かされ
そんな些細な日常を尊いと思うけれど
次の瞬間にはもう
諦めることに慣れている
余白がすべて埋まったので
君は新しい天気図を書き損じている
すべてが終われば僕らは列車に乗り込む
薄暮の中
今夜見るべき夢の中へと進行して行く