夏の予定
観葉植物に餌をやり忘れて
餌はやらなくていいんだよ、と
言葉で教えてくれた人がいた
階段のよく晴れた踊り場のあたりにも
エタノールの匂いがしていて
その間、何本かの準急列車に
乗り損ねてしまった
仕方なくその滑らかな付箋の質感を
爪で剥がすしかなかった
日々の生活を見渡せば
このように剥離していくものは
常に身体などの近くにあり
子供の頃、人と人の隙間に
はぐれたこともあったけれど
どこかで線引きをしなければ
多分あのまま全部
子供であり続けた
上席に夏の予定を聞かれ
特に隠すつもりもなく
雨に溶けていく海の泡沫を思いだし
薄っすらと伸びていく砂の陰影や
誰にも知らせなかったフナムシの亡骸が
懐かしく感じられた
観葉植物についている外国語の名前を
ひとつずつ覚えていったように
命は囁きに戻っていく
少しまとまった夏休みを取ったのに
初日の朝、窓を開けると
もう秋の気配がしていた