ポエム
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ひびのあぶくに
ふとした時に、にわかに端から端まで消えてしまいたいと思うことがあった。ぼくはまだ小さかったし、世界はとても大きく見えた。16歳になってはじめて自分が炬燵に潜れなくなっていたのを知った。そして18歳になってぼくは、穴だらけのスポンジのように体の大きさに比例して心がスカスカになっていくのを感じた。
ぼくはいま崖にたっているんだと思う。それは、小さな子供達が落っこちないようにキャッチするだとか、誰かとひとつになるための接吻を交わすだとか、そういうことじゃなくて、向こう岸の景色をみる為にいる。そこにはぼくの愛した人達やこの身が震えるほどに美しい本や音楽、そして鮮烈な思い出の欠片があった。ぼくにここを渡ることはできない。後ろ向きに、上ばかり見てずっと歩いてきたぼくには、もう正しい道が分からなくなっていた。喪失だけがいつもそこにあって、ぼくは落ちることに慣れていた。ぼくは死にたいのだろうか。それともミュンヒハウゼンというやつだろうか。
ただ一つ確かなことは、これ迄ずっとぼくは、ただひたすらに寂しいということだけだった。
22/01/05 03:25更新 / 阿呆



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