ポエム
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祈り、契約、軛
季節は逆行する。君の、おおきなおおきな口の中で、螺旋を描くように。
九月、公園のベンチで古いカメラを携える君がいた。枯れた木々と、景色を反芻する君の横顔は悄然としていた。子供達は誰一人いない、寂しい風景に君はひどく溶け込んでいた。例えばここで君が死んでも、誰もが気に留めないだろうなと思った。
五月、君の姿はそこにはなかった。そこにあるのは鬱屈とした風景、ただそれだけだった。僕はどうしようもなく悲観論者で、触れることを赦されないのだと思った。
「言葉は完璧なのか?記憶は確実なのか?祈りは届かないのか?」
慈愛も悪辣もないこの場所で僕らは祈ることすらままならないでいる。反逆する風景のなかにいた記憶の中の君は、ひどくぎこちなく笑っているように見えた。
20/03/26 01:36更新 / 阿呆



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