ポエム
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ひざのうえ
キラキラ 絵本を抱きながら
ウルウル ベロを出しながら
あたしの隣に一人と一匹
つぶらな瞳のはさみうち

読んであげる 椅子にかけて
右手でおいでと膝を叩いて
読んでからね 鼻先に触れて
左手でそっと待てを示して

ブランケット一枚だけで
こんなに一緒に温かい
絵本のお話 始める前に
2人でお話 今日のできごと

あたし体育 ぼくおえかき
跳び箱6段を クレヨン7こで
初めて跳べたよ にじをかいたよ
あたしよりも大きな数字だ
凄いよ 偉いよ よく描けました
くしゃくしゃと頭をなでまわす

ここから顔は見えないけど
肩が揺れてる ああ笑ってる
ここからだからよくわかる
小さな肩は震えるよりも
ずっと揺れててほしいから
あたしはもっと褒め上手になる

むかしむかしはいつのむかし
あるところってどんなところ
めでたしのあとはどうなるの
読んであげれば質問だらけ
あたしなりに答えを出して
読み終わりはヘトヘトだけど

またよんでほしいの言葉
それだけで全部報われる
ずっと座っててくれるなら
あたしはもっと読み上手になる

呼んであげよう 左を見れば
しょんぼり尻尾で待ってる
ぼくがよびたい 手の平叩いて
待てが解かれてよしになる

耳を立てて駆けだして
ブランケットに飛び乗った
あたしの体に一人と一匹
ずっしりときても重くない
あたしは最も力もちだもの

すごいよ えらいよ よくまてました
小さな手で褒めながら
くしゃくしゃと毛並みをなでまわす
その褒め方もなで方も
とても見覚えがあるような
さっきあたしがやったような

そんな素振りで気づかされる
身振り手振りのあれもこれも
どれも手本にされてること
忘れてたよ あたし自身も
見たこと されたこと どんなことも
見本にしてた時があったこと

どっちの顔も見えないけど
肩も尻尾も元気に揺れてる
あたしは背中を見てるけど
あたしも所作を見られてる

今日もいつかはあの頃になる
小さな手が大きくなって
肩幅も広くなるのかな
そうしていつかは大人になって
あたしがやってあげたことも
誰かにやってあげるのかな

絵本を読んであげる時
大きな手でなでる時
低い声で褒める時
あの頃のあたしを思い出すのかな

そんな未来があってほしいから
あたしは誰よりも褒め上手になる
あたしは誰よりも読み上手になる
22/01/20 05:53更新 / ぬけあな



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