ポエム
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とある街 T  夢を見ない黒猫
朝が来ないままのドームを眺める黒猫の目は橙に輝いていた
「この下には夢を見たい生き物たちが」
「毎晩少しずつ逃げてくるのさ」
無風の中を揺らす箒が虹を反射する
大きなあくびを一つして
黒猫はふわふわと降りていく
「放っておけば夢に呑まれる」
「それは自由さ」
「でもドームの中の体まで止まっちゃかなわない」
扉を開けて中へと突き進む
螺旋階段を上がって小さな廊下
ドームの2階の壁際はギャラリーと呼ばれる
「ここから見えるのは横になった抜け殻だけさ」
「いつだって」
ため息を吐いて窓に手をかける
一つ一つ開けてゆく度
ほんの少しの酸素が入る
見渡せば何百の窓
何千の抜け殻


「駄賃だよ。よく途中で倒れなかったね。」
「また手伝ってほしいくらいだ」
黒猫はアイスコーヒーをすする
もらったアイスコーヒーをー口飲む
呟く声がする
「夢は見ないんじゃなく、見れないんだな」
「呑まれた猫を知ってる」
ドームを見つめる黒猫の目は青に輝く
「それでもここにいるのは」
「夢を見たいからかもしれないな」
19/03/28 11:13更新 / 辻葉冷弧



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