夕闇、帰る都会の一室
石けんの香りがする。
ボタニカルとか何とか言ってたけど、要は髪に優しいってことなんだろう。
でもこれもやっぱり君の匂いじゃなかった。
冷えた金属ベッドに残る微かな温もりに 入れ違ったことを知る。
こんな時、住む世界が違うことを寂しく思う。
選んだことを棚に上げて、そんな器用さだけはなくて。
夜の色がひどく虚しい。
今日は此処にずっと居ようか。
眠らなければ君は来るだろう。
水に濡れたままの髪をいじる。
風邪を引いてしまう気がした。
けれど、それなら明日は一緒に居られる?
時計の無い部屋でも
君が今何をしているのか手を取るように分かり、そうだった。
違いを選んだのは昔の自分だった。
もう同じじゃないんだね。
昏い言葉を跳ね返す磨りガラス。
さよなら
が悲しいと知ってから
ありがとう
が辛いと分かった。
いつまでも、これからも
続かないから続いているはずだった。
そんな、
関係
で。
だけど
早く君に会いたい。