【ギター】
ある日あなたは突然言った、
「見せたい景色があるんだ。」と。
いつも服選びに苦戦して、
待ち合わせギリギリに滑り込む私の乱れた髪を、
チューニングして整えてくれる優しいあなた。
少しいたずらめに私のほっぺを指で弾いて、
微笑むあなたが始めるの。
あなたの指が私の指にそっと絡まる…、
それだけで想いが波に乗って、
今日という五線紙に張り付いていく。
温もりが少しずつ奥まで伝わってくる…。
精一杯あなたを感じようとする私も、
あなたはお見通しなのだ。
「お前は本当に分かりやすいな」と言うけれど、
それは褒めてるの?けなしてるの?
図星をつかれてふくれる私に
あなたがテンポを変える。敵わないなぁ。
あなたは心をすぐに読んでしまうから、
私は身体を震わせることしかできないくらい居心地がいいの
…、ねえ、聞いてる?
私が好きなあなたの声と、
あなたが好きな私の声の波長を合わせて
たくさんのコードを作ろう。
たとえすれ違いの時も、
今までの2人を忘れることがないように。
私が好きなあなたの笑顔と、
あなたが好きな私の笑顔で
たくさんの歌を歌おう。
これからの2人の未来を
明るく照らすように。
ふと我にかえる私に
「どう?きれいな景色だろ?」と、あなたが言う。
…ごめん、あなたしか見てなかったや…。