ポエム
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トムソーヤーの花嫁
長旅の一日の終わり、男はプロポーズを切り出す。疲れのせいだ。女は突然のあまり言葉を失う。その代わりを埋めるため、あなたはタバコの煙をゆっくりと吐き出す。つまり、また世界は救われた。

中心に焚き火、雪に片足を取られ犬が溺れている。

背伸びして手を出した本を途中で投げ出すみたいに、息をする。これはこの先、誰かを助けるために与えられた一呼吸。
物事は循環するんだよ、したことというのは必ず帰って来る。
長い行列だ、あそこにいる人たちは自分の体に権限を持っていない。愛ってのは許可のことだよ。そうとしか考えられないからヘンリーフォードはライン生産方式をあんな大胆に取り入れたんだ。

右手に空のコップ、祖母が雪の途切れ目を縫い始める。

男は決して多くは望むまいと決めていた。そんなこと上手く行くわけがないと知っていた。自分の肉体を自分のものにする必要はない、ただこの自然の広漠さに預けてしまうだけでいい。それが最善だと。それならば、と男は考えた。俺は約束を破ってしまったのか?あたりに目をやる。何を探してるわけでもないが、人は内には目をやれないのだから。男も例外ではない、当然。

「目をぐるっと一周させてごらん。そして体をぐるっと一周。ほら、人は全てを見ることができるのよ」
あなたは子供から着ぐるみの中身のことを聞かれ、そんなことを答えた。

男と女の価値観が合っていること、今日このコートを着てきて合っていたこと、
何か些細な誤解があったこと、それらが全部同じ場所で起きていること、
女は言葉を取り戻せないとわかっている。なぜならあまりにも突然だったのだから。

足元に濡れた手袋、雪が止まない。

長旅の一日の始まり、何も望まないが食器棚を買おう。疲れのせいだ。女は突然のあまり男の名前を忘れる。だからもう一度尋ねる。男は苦笑い。そのぎこちなさがまた世界を脆くする。だから2人は踊る必要があるのだ。
22/01/06 15:07更新 / Laurie Birds



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