10回分の嘘で命を帳消しにする。
手段を選ばずに、君は幸せになっていく。
「時間厳守って言ったでしょ？」
うん、だから明日になる境目にぼくを沈めてよ。

立ち止まろうとしてる。
君の首にくっきりと残る痛々しいその痕。
ぼくは少しだけ命を延滞し、
君に嫌われていく。

何も聞こえない、森の中。
君とぼくとで擬似家族の契約を交わす、キス。
ぼくが父親で、君は娘だよ。
社会から距離を置きここでずっと暮らすんだ。

分娩室に広がる焼きたてのパンの匂い。
雨でサックスが錆びていくのに、チェロは恵奈の緘黙を治してしまう。
フードの中で大人になった。あとは知らないふり。
でも空をそっくりそのまま縫い付けたよ。

指の長さを変えられる子供に出会った。
君はまるで自分が一番正しいみたいな笑い方をする。
そこでは全てが肯定されているから、
ぼくは一つ趣味を捨てなくてはならなかった。

■作者メッセージ
同級生は家庭を持ち、子供の将来について語り合い、過去とはもう決別したいみたいに見える。