人ひとりの夜
家族といるのが苦になって
深夜家を飛び出した
人も車も灯りも無い道を
宛もなく歩いていった
すると一本の川に辿り着いた
ザアザアという音に惹かれてそばに寄れば
水の音は猛々しく
虫の声は清らかであった
それらは人の声よりも騒がしくはあったが
誰も私を責めなかった
すくい上げた水は私の手の中で踊り
優しい風が私の頭を撫でた
草木は私に無関心であったが
ずっと共に居てくれた
寂しさが埋められていくのを感じながら
私もその中でランランと歌を歌うのであった
ひとつ涙が零れたのを
星だけが雲の隙間から見ていた