フェンスに囲われた鶏たちの家があった
窮屈だ！　退屈だ！
彼らはぎゃいぎゃい不満を垂れて動き回る
木と野原とベンチが置かれただけの田舎の空に
忙しない都会のような喧騒が響いていた

一匹逃がしてやろうか、少年が言った
泥棒になってしまう、私は慄いた

養鶏場はもうない
悪戯に笑ったあの少年はいない
かつて鶏たちを取り囲んだ柵には
ぽっかり穴が空いていた

■作者メッセージ
はじめまして、朔田と申します。
初めて投稿させていただきました。
不慣れなことも多いですが、よろしくお願いします。