ポエム
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並木道
夏が終わって
あるんだかないんだかの秋も
終いが近づいてきた
また今年も通りには
好みじゃない懐かしさを漂わせ
視界の左右を縁取るように
イチョウが色づき始めている。

みなが心待ちにしている
聖夜もすぐそこで
何を思い返すでもなく蘇る思い出は
イチョウにピントを合わせていたようで
淡く優しく柔らかく曖昧に。
あれもこれもを美化し始めた
末期症状をため息で紛らわす。

君と僕とのほんの昔は
今じゃ濁って霞んで
イチョウに何かを託した去年を
憐れみながらも
美しいものだと認めている。
人生の瀬戸際と今際の際を重ねて
絶望に打ちひしがれた。

3つ数えてイチョウを散らして
5つ数えて来たる年を生きる。
クリスマスを刹那的に過ごし
越冬を図る。
西に沈む夕日の位置を捉えて
走り出し
6つ数えて賽を振る。

違いを明るくするために
紅葉も名も知らぬあの木も
山に映る絢爛たる暖色をトリガーに
今年のあれこれをカプセルに詰めて
今宵は望月を眺めたい。
忘れる怖さにホッとする自分に驚いて
儚い過去をヒラヒラと遠ざける。


23/11/19 15:33更新 / U.S.



談話室



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