「全部ウソ」
疑り深い君が言う。
「全部だよ、全部欲しいんだよ」
黙ってその小さなカラダを引き寄せて、抱きしめた。
「うん、俺もだよ、同じだね」
そう答えながら、一つだけ、ウソをついた。
「君にサヨナラだけは言われたくない」
そんな、「全部」、の中に入ってる怯えだけは、
どうしても、言えない、言えなかった、あの日から…
「ぜーんぶ、ウソ」と笑い泣きして去る君をみて、
あのときの「全部」の中に、僕と同じものも入ってたのかな?
最後の「ウソ」もどこまでが「全部」だったのかな?
全部ウソ、って、もっと早く、言えたなら、もっとお互い、欲張りになれてたのかな?
君の背中越しに映る夜空に向けて、この独り言も、全部ウソにしてしまおう。