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蛇行の周辺  2
   2 沼のほとりで


くねくねと流れる河の
ちょうど一番曲がった先に
お姫さまは座っていて
足を河の水にひたしていたわけ
ちょうどこんなふうに
とても退屈していて
水 水 おいで
もおっとおいで

そのとき
別に呼ばれたからではないんだけど
雪解け水の濁流がおしよせて・・・
お姫さまは流された?
ううん
流れが速くて曲がりきれずに
河はまっすぐになってしまい
お姫さまは三日月形の沼に
とりのこされてしまったの
ああ そんなものか と
お姫さまは思って・・
何がそんなものなの?
そんなことわかんないよ
・・・とにかく
そんなものかと
お姫さまは思って
寝て果報を待ってみた
岸辺は蟻が多いからくすぐったかろう
それには目をつぶって耐えた
一列縦隊でいつまでもつづいた かゆい
ある日
もう頃合かと思って目をあけると
見えたのは空
いいことなんて何も起こらなかった
雲は頭の後ろから来て
足先の方に去っていくばかりだ
やはり と・・・
いつも後ろから気がつくお姫さまだね
気がつくのは誰だって後ろからだよ
・・・失われたものを求めるには
努力 努力しかないかなあ と思い
しかたがない
自分の方から歩み寄ろうと
立ち上がったひょうしに
からだがまだ起きていなかったから
ころんで沼に落ちてしまったの
あら あらら
それは昔
執着がはたの目を気にしないで
いられたころのことだから
お姫さまのことを
誰も笑ったりしなかったよ
・・・岸にあがると
ほうっと一息ついて
気をとりなおして
お姫さまは歩いていったけど
河までたどりついたかしら

風がわらっている
葦がいっせいにふりむいて
ふり落とされそう
もう少ししたら
夏だね
いつまでも
殻にしがみついているのは
およしなさい
さあ
行かなくては
21/03/14 14:26更新 / Sayori



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