ポエム
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七月の沼           盆に寄せて
梅雨のたまりみずだろうか
私のなかにある
ぬるみやすい小さい沼

雨上がりの眩しい陽ざしに
まるめ込んでいたものを
引きずりだしては
白く晒して素手で洗う
ささいな染みまで気になる病に耐えて

ほのぐらい部屋に戻れば
香をたくこと
お供えをするということはせず
ガラスの小鉢に
浅漬けのなす きうり
飲み残しの麦茶もそのままに
しだらなく 椅子にもたれて
言いたかったこと
言わなかったこと を
くりかえし
鮮やかだったことがらは
すっかり褪せてしまったようなのに
抜けきれない染みのようなものを
ああ きっと
あのひとも言わないことがあったのだろうと
逝ってしまったひとの分までひきうけて

まだらになった内側は陽にさらさずに
うっとりと
しろっぽい指先で
沼のあたりに風を追い
また生まれ変わるつもりになっている
21/07/18 23:16更新 / Sayori



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