ポエム
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テインパニは踊った
「アフタヌーンティーをしよう」
スマホから目を離さずに娘は唐突に言った
(イヤなことでもあったか?失恋か?)
訊いたところでしかたがないが
「話したいことがあれば聞くけど?」
「だから、アフタヌーンティーをしようって」
スマホから目も手も離れないままそう答えた

ティーパックの紅茶を淹れ
竹籠に煎餅を入れて出してやると
文句も言わず目も向けず煎餅をつまんでいる

「テインパニが踊っているのを見たことがあるのよ」
「はあ?テインパニって何?」
「4つ太鼓が並んでいる楽器よ」
「そんなもんが踊るわけないじゃない」
けれどその時テインパニは踊っていた
私が黙ったので娘はこちらに目を向けた

なんのコンサートだったろう
ひとりだった 若いころ
恋ではない 恋だったろうか
襲ってきた狂おしい想い
這い上がってきた焦燥と不安
目の前でテインパニは踊りだし
操るように演奏者も踊っていた
華麗に うつくしいジョーカーのようだった
紅茶が渋くなるほどの時間だったが

「マイセンのテイーセットでも買おうか」
(いずれあなたも何かが踊るのを見るかもしれない)
「なあに言ってんだか」
娘の目は私を離れて再びスマホに向かった
21/04/28 18:07更新 / Sayori



談話室



■作者メッセージ
娘はいないのですが

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