ポエム
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蛇行の周辺  3
   3 河に沿って


河に沿って歩いている
すこしずつ向こう岸が遠ざかる
いつかは海に出るのだろう
末広がりに降るひかりに
傘つきの舟で下るひとの
顔がまあるい
まばたきすれば
なつかしさだけ残して
光に還る のんびりしたお顔だ

岩の上には長い耳がたたずんでいる
釣り糸をたらしたまま
さかなのおしゃべりを聴いている
さかなはとてもおしゃべり
さかなでなければもっとおしゃべり
海に出たらなにもかも忘れてしまいそうだから
いまのうちにできるだけ聴いておこう
聴きのかしたことについては
気にしたり
しなかったり

向こう岸が遠ざかる
吹きすぎてから
風が悔いている
速すぎるとか
遅すぎるとか
海への距離を
わたしは 知らない

21/03/14 14:45更新 / Sayori



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