目は口ほどに物を言う
好奇の目も
侮蔑の目も
隠しきれない本音を教えてくれる

視線を逸らしては
気にしない冷静を装い
綺麗な風景が
醜く濁る

田舎道の裏路地も
群雲に見える三日月も
降り頻る雨に雫滴る花も
季節の桜も海も紅葉も粉雪も

本来持つべき風情をなくして
汚く見える
どうしても煩い目が
傾ける酒にも酔えやしない

目は口ほどに物を言う
憤怒の目も
憐憫の目も
隠す気もない本音を伝え行く

逃がしはしないさ
許しもしないさ
醜く濁る目を
くれた人たちへの仇返し

隠れた心算の物陰も
夕闇に逃げ出した背中も
雨の騒音に呟いた言葉も
春夏秋冬飽く事無くくれたじゃないか

本性がどちらかも
わからなくなったか
溜息誤魔化して
吐き出した紫煙も不味くて仕方ない

ふと叩かれた肩に
「大丈夫？」という心配そうな声
あぁ解けていく
溶かされていく

目は口ほどに物を言う
本当にその気持ちを読めてしまったが故に
気付かれたくない本性を知った
社交辞令の裏の嘲笑いに気付いた

だから心根から心配するその瞳は
どうしようもなく鮮やかで暖かい
流れ出た雫に写した情景は
この眼から離れない

風情の欠片もない街中さ
情緒もない瞬間さ
それでもその瞳が
何にも勝る記憶へと焼き付いた

その自身の目が
そう見えたのか
その口から聞くことに
決めたんだ