ポエム
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一輪の花
花を見つけた

舗装されてない砂利が敷かれただけの粗末な月極駐車場の片隅に

純白の花びらを目一杯開かせた一輪の白い花が咲いているのを、見つけた

なぁ、白い花よ。オマエはどうしてこんな辺鄙な場所にも関わらず、生真面目にも咲こうと思ったんだ?

ここで咲いたって

誰の目にも触れないし
誰もオマエの存在を認識することはないっていうのに……

誰にも知られず咲き続けることに虚しいとは考えなかったのか?

馬鹿らしいって

無意味だって

そんな想いに囚われなかったのか?

……いや、スマン。こっちの価値観ばかりをオマエに押し付けていたな

こんな価値観、オマエにとっては下らなくて無用の長物にしか見えないよな

だってオマエは誰かのために咲こうとしていたのではなくて

自分が咲きたいと強く願ったから、今こうして堂々と咲いているんだもんな

咲いた場所や咲いた存在意義とかなんて、オマエにとってはどうでもいい話しで

オマエにとって一番重要だったのは、咲きたいという自己の純粋な望みを叶えてやることだったんだよな

……なぁ、白い花よ。ワタシもオマエみたいに心に埋めた花の種を咲かそうと思うんだ

ワタシのよりも可憐で色鮮やかな心の花を咲かせた人たちは世の中にはごまんといるけども

そんなのは関係ないよな

だってワタシは

誰からも羨望の眼差しで見られるような秀逸な花を咲かせたいんじゃない

他のどの花よりも圧倒的に華美できらびやかな美しい花を咲かせたいんじゃない

どれだけみすぼらしくても

どれだけ色褪せていようとも

ワタシは世界でたった一輪しかない

ワタシだけの心の花を咲かせたいんだから

白い花よ、ワタシの心の花が咲いたらその花を見てくれないか?

オマエにとっては傍迷惑な話しだろうが、どうしてもオマエに見てもらいたいんだ

だからどうかその時まで枯れないでいてくれ

夏の陽射しは暑くて厳しいだろうけど

そんなに待たせることはしないから

頼むよ。名も知らぬ白き花よ


25/07/18 12:19更新 / まだら雲

■作者メッセージ
どんな花であれ

咲いたら誰かに見せたくなるものですよね

読んでいただきありがとうございました

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