ポエム
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独りで立っている人
曇天のなか その人はたった独り耐えていた

身体を穿つような激しく凶悪に降る暴雨に

四肢を引き千切らんばかりに強烈で残忍に吹き荒ぶ暴風に

その人は独り耐えていた

周囲には暴雨風をしのぐ家屋はなく その人は生身でその場に立ち続けるしかなかった

『頑張れ!』

思わず声援をかけてしまう

黙って見守り続けることなどできなくなったから

『頑張れ!頑張れ!』
このまま耐え抜けば必ず報われる!

根拠などはない が、報われないという選択などあろうものか!

『頑張れ!頑張れ!頑張れ!』

一生懸命に努力する者が報われないだなんてこと あってはならないこと!

だから必ず報われ 相応な幸福を手にするはずだ

じゃなければ 報われないというのならば ここは苦界以外のなにモノでもないじゃないか!

『頼む 報われてくれ! お願いだ 報われてくれ! どうか 報われてくれぇ!!』

自分勝手な渇望に満ちた声援など聞こえず その人はいまだ治まらぬ暴雨風のなかを独り立っていた

これからもずっとずっと 力尽きて倒れるまで

25/03/29 14:02更新 / まだら雲



談話室

■作者メッセージ

願望を文章にしてみました

読んでいただきありがとうございました

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