ポエム
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すし詰めの温もり
無表情のスーツ姿が収容されていく
ドアのガラスにはいくつもの手形がつく
黒い球の凸凹から星の数ほど腕がのびる
ガタンゴトン、初動で人の波は一体になった

突然
誰かのガラケーが存在を主張する
忘れんな、オレ様のこと
怒りで目は青や赤に点滅する
本を鞄にしまい
老婦人がガラケーを開く

プルルルル、プルルルル
ガタンゴトン、ガタンゴトン
プルルルル、プルルルル
ガタンゴトン、ガタンゴトン
プルルルル、プルルルル

ガラケーの怒りは収まらない
無表情だった顔が
ドミノ倒しみたいに冷たくなる
ガラケーは相当怒っている

隣でスマホと戯れているサラリーマン
老婦人の耳に耳打ちする
小さなお辞儀をしながら
老婦人がガラケーを渡す

サラリーマンは微笑んで
優しくボタンを操作した
ガラケーの怒りは収まり
冷たい顔が無表情になる

さらにそれから
無表情にえびす様が舞い降りた
満員電車の温かい風景
19/09/18 19:51更新 / 楠木 凜



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