ポエム
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心の街
戦争で焼け落ちた大都市で 何もかもを失った連中が跋扈する

かつて好き放題やってた金持ちの連中 今は乞食と同じで禿げ散らかした頭を下げている

毛布三千円 毛布三千円 呟き続ける老婆を見て憂鬱になる
そんなもの売るなよ 一番要るのはお前だろ

全てを売った私が言えたことじゃないが


夜になると 今日も駅前の道で朽ちている人々
ボロ布の塊どもが並んで 横長につくねた布団みたいだ
一人ぐらい死んでる奴が居やしないか
そう思って一番汚い布を剥いだ 虚ろな目の男に見つめ返された
気色悪い こんなになってもまだ生きる気か

奴より酷い顔の私が言えたことじゃないが


朝になって燃え盛るビルの前に立った
周りが全て焼け落ちた中 ただ一つの灯火みたいに健気に光ってやがる
熱いくせに 無理すんなよ

その炎で暖を取る私が言えたことじゃないが

そんなことを思っていたら目の前の木が倒れてきた
炎を纏って襲い来る
咄嗟に私は飛び退いた
飛び退いた自分に驚いた
間に合わなくて下敷きになった
痛い痛いと苦しむ自分に驚いた
ああ、もしかしたら私はまだ生きていけたのかもしれない

暗い視界の中 私を見下ろす男が居た
私は自分を見た気がした
19/10/22 18:36更新 / 古町



談話室



■作者メッセージ
希望の難民たちが集う街。

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