BPM71
今日は特別に足を使わないで。
草の上で飛んでいる黄色い蝶の名前さえ忘れたよ。
草臥れた金木犀の匂いと静かな信号の色も。
秋顔して当たる風と最初の役目を終えた木の葉も。
月の季節の思い出や何度でもと言う志も。
一粒だけ落ちた雨粒とそれを親として見る雨粒も。
バラッドの世界とアリアの世界も。
全部を忘れてゆっくり歩いて。
こんな季節だからこそと髪型を気にするように空を掻き分けて泳ぐ準備をする。
僕だって大人になるんだよ。
全ては僕の方向へと。
終わる気がしないけど。
ゆっくりと確実に。
歩いて、歩いて。
右足の次は、左足だよな。