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失われし啓示
やるべきことが山ほどあるのに
しかも明日締め切りの仕事なのに
一日中寝ながらスマホをいじっていて
布団の上で泣いていた夕方。

わたしは突然、啓示を受けた。
「今すぐジョギングに行け
そうすれば全てが良い方向におさまる」
と。

誰からの啓示か知らないが、
2年前行ったきりのジョギングに行かずにはいられない衝動を抱いた。
ジョギングに行けば、全ての問題が解決すると思った。
過去ジョギングで、美しい夕焼けを見た思い出が噴水のように溢れかえった。
風に包まれ、心から爽快感を抱いた思い出が噴火するように溢れかえった。
わたしはその美しさを喉から手が出るほどに欲した。

無我夢中になって、
気違いのようになって、
タンスをひっくり返してウェアを探した。
ジョギング用のTシャツがあった。
ジョギング用のズボンもあった。
しわくちゃだがそれを着た。
ジョギングといえば音楽が必須なのでイヤホンも探した。
いつものが無かったが、100均で買ったスタメン外のイヤホンがあった。
ジョギング用の靴を探した。
ところが、わたしは運動靴をひとつも持っていなかった。
見事にヒールしかなかった。
歩いたり運動する習慣がなさすぎて、この前運動靴を全て捨ててしまったのだ。
しかもピンヒールしかなかった。
いくらわたしでも、ピンヒールでは走れないことがわかっていたので、
わたしは玄関で立ち尽くした。
ただ立ち尽くした。
何もできず
ただ立ち尽くした。
夜まで立ち尽くした。


20/03/19 00:00更新 / らん



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