ポエム
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祈り
そのピアノの敬虔な響きを耳にすると
まるで心が、精神が天界に連れ去られたように
どうしようもなくこの世の深淵へと引きずり込まれて
黙り込んでしまうのは何故なんだろう?

この和声は
この音楽は
聴く者をいったいどこへ呼ぶの?

ため息のようなメロディの、一滴一滴が
テレパシーのように身体に忍び込み
あらゆる頑なさを静かに溶かしていく。

そのわけは。
楽譜に書かれた音の一つ一つ全てに
作曲者の痛いほどの祈りが
注ぎ込まれているから。

作曲者の痛い祈りは
目に見えない波形となって
宇宙の彼方の見知らぬ星々まで届く。
次元を超えて、神まで届く。

作曲者の痛む想いは
彼の生まれた国から育った。
彼の住んだ家から育った。
彼のその人生から育った。
彼のその傷ついた繊細な心から育った。
そして祈りは、彼を生んだ母の
その母の
母の
そのまた母まで
遡る。
20/03/18 00:15更新 / らん



談話室



■作者メッセージ
フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」というピアノ曲を聴いて浮かんだ詩です。フランクは教会オルガニストを務めており、敬虔なクリスチャンで、主にオルガン曲を数多く作曲しました。

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