浴槽の縁に腕を組んだ形で乗せ
頭をそこにゆっくりともたれかける
二の腕の質感はフニフニと柔らかく
頬と耳に吸い付いて包み込む
目を閉じて、自分の心臓の鼓動を聞く
これが、私が今生きているということ…


鍋に水を入れて火を点ける
熱い湯気が目の前をぶわっと包み込む
沸騰してきた鍋に牛肉をそっと入れる
赤い肉は湯に触れた部分が茶色く色変わりする
肉が見る間に小さく縮んでゆく様子を見て、悟る
これが、かつて生きていたということ…


古いテストの答案を部屋の机から引っ張り出して
ビリビリに細かく破いて頭上に散らした
見て、これが私の小さな吹雪
高校生のアホ答案の哀れな吹雪
一面の銀世界を見て、悟る
この紙も、かつて生きていたのだと…

たぶん…