ポエム
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ベル
君が初めて僕の膝の上に座った
あの瞬間を
僕は今でも昨日のことのように思い出せます。

小さな君は少し怯えていて
一歩、一歩、と感覚を探るように
僕の元へやって来ました。

僕も少し怯えていて
ひとつ、ひとつと確認するように
君の頭をなでました。

それから僕らは一緒に歳を重ね
"ああ、君は随分と…"

今でも重ねゆく日々に
その日が来るのを恐れながら
僕らはまた今日を見送るのです。

"君に謝らなきゃいけないことが沢山あるよ"
"例えば君をおいて行ってしまったことや"
"例えば君を怯えさせてしまったこと"
"君がくれた愛に誠実に応えられなかったことや"
"君が嫌いな写真を沢山撮ったこと"

でもそんな沢山より遥かに
僕が君に伝えたいのは

"僕を愛してくれたことに"
"いつでも隣にいてくれたことに"
"泣いていればなぐさめてくれたことに"

"本当にありがとう"

"僕は"

"この上なく幸せ者だった"

今ならよく分かる
喉が焼けるくらい痛い程に。

そして今僕が願うのは

君の心からの安らぎと
その瞬間に僕が君の手をとり
その最後の最期まで
君を見守り続けられるように、と。

ただそれだけなんだ。

神様が本当にいるのなら
きっと大丈夫だと信じてる。

あと何回会えるかな、

何十回でも、何百回でも、何千回でもなく
その数回で僕は。

死ぬ程愛してしまうだろう。

どうかいつでも君のまわりが
暖かくて優しい世界でありますように。
20/08/10 07:28更新 / ぽち



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