虹
雨上がりは好きだ。
まだ、雨の滴が残っている風景に、水溜りや、お日様の光。
なんだか、とっても開放感に包まれるから。
ウキウキするから。
決して、あいつが帰って来るからではない。あくまでも、雨上がりが好きだからだ。
おじいさんから譲り受けた、年代物のベスパのシートに座った私は、バス停のネームプレートを背にしたまま、少し高台になっているその場所で唇を尖らせた。
別に、この場所に居るのも、この風景が好きで、いつもここから眺めてるからで、特に理由が有るわけではない。
ただ、あいつが帰って来た時に一番に出逢ってしまうのは、偶然で、それは仕方のないことだ。
うん、そう。別に、私が待ち望んだ事ではない。
私は時間を確認する。
田舎のバスはいい加減なもので、予定の時刻に差し掛かるが、まだその姿すら見えない。
私はもう一度、バックミラーを覗き込んだ。
これは、鏡越しの風景が見たいだけで有って、偶然にそこに写った私の前髪が、跳ねているのを、手直しするのは当たり前の行動だ。
そこで鏡の片隅に虹を見つけた。
私は振り返り、口を開けたままの間抜けな顔で、しばらくそれを眺める。
「………これは、あいつに教えなくっちゃ」
思わず、口から出た台詞で我に帰り、言い訳を付けようと考えて居るところに、バスの音が聞こえてくる。
私は念のため、もう一度だけバックミラーを覗き込んだ。
あくまでも虹を見るためだ。
よし、乱れていない、大丈夫のはずだ。
………虹がね。
まだ、雨の滴が残っている風景に、水溜りや、お日様の光。
なんだか、とっても開放感に包まれるから。
ウキウキするから。
決して、あいつが帰って来るからではない。あくまでも、雨上がりが好きだからだ。
おじいさんから譲り受けた、年代物のベスパのシートに座った私は、バス停のネームプレートを背にしたまま、少し高台になっているその場所で唇を尖らせた。
別に、この場所に居るのも、この風景が好きで、いつもここから眺めてるからで、特に理由が有るわけではない。
ただ、あいつが帰って来た時に一番に出逢ってしまうのは、偶然で、それは仕方のないことだ。
うん、そう。別に、私が待ち望んだ事ではない。
私は時間を確認する。
田舎のバスはいい加減なもので、予定の時刻に差し掛かるが、まだその姿すら見えない。
私はもう一度、バックミラーを覗き込んだ。
これは、鏡越しの風景が見たいだけで有って、偶然にそこに写った私の前髪が、跳ねているのを、手直しするのは当たり前の行動だ。
そこで鏡の片隅に虹を見つけた。
私は振り返り、口を開けたままの間抜けな顔で、しばらくそれを眺める。
「………これは、あいつに教えなくっちゃ」
思わず、口から出た台詞で我に帰り、言い訳を付けようと考えて居るところに、バスの音が聞こえてくる。
私は念のため、もう一度だけバックミラーを覗き込んだ。
あくまでも虹を見るためだ。
よし、乱れていない、大丈夫のはずだ。
………虹がね。