すいせんべんじょ
はるの匂いです
遠いよこくです
まだ指のばしても 達どかない
ただ 復び跨たいで貴方に逢えるのが
まちどおしいのです
急峻の 苦の谷を命賭けて跨いだ後で
貴方と凭たれあい 互いの彫疵撫でて
癒やして戴くその掌が慕いしすぎる
ひたむきにひたむきに 恋慕
まるまるっと恋慕
喩えそこがわたしたち2人の
墓地のかたすみであっても
墓標だけがわれらが息絶きた証しで
あったとしても
水仙の陽章だけがほろらりと
おららんかに
かつて咲乱れ誇ったわたしたちの
純真を剞ざむ 灼い刃となって
弾痕んとなって
史録たりをまもってくれています
無骨な 灰青の土肌だに
寡黙に尽き 刺ったまま
たとえ 淋みしくても
どんなにせつなくても
いくとせいく十っとせ存がらえて
待ち侘びる
お互いへ詫び合うだけのために