パア・プル・サン
『提督。我が軍はもう終まいです。
貞国軍主力艦隊が目前に迫っていま
す。敵は当方の兵力の80倍です!』
『まだだ!諦めてはいかん。彼を呼
び寄せている。到着するまであと30
秒だ。それまで持ちこたえるんだ』
『彼……?増援ですか』あと15秒
『たのもしい存在だよ』あと10秒
わたしは知らずほくそ笑んでいた
『…… 紫恒星さ。ほら来た!』
そのとき唐突に真空空間に断層が生
れ背景の星々が切り取られたように
消えた 向う側からびかびかと紫に
かがやくプラズマや稲光が突き出す
のが見えた
『なんです?』訝しむチーフオペレ
ーター達は次にはアッと聲をあげた
それは巨大な恒星だった
艦橋内スピーカーから通信が入った
『やあクリストファー。遅くなって
すまなかったね』
チーフオペレーターのリホコが頚を
かしげて訊いた『この聲…… あの星
が言ってるんですか。まさか……』
『そんなことはいい。この宙域から
大至急緊急ワープで離脱だ』
『! ……ラジャー』
もはや一刻の猶予もなかった
やがて移動恒星パープルスマイルの
灼熱は目前に散開する敵主力艦隊を
暴虐的に一挙に呑み込んだ そして
すべてがね鎮ずまっていった
当軍艦隊は隣接宙域に無事ワープア
ウトし全艦の安全を総確認してから
敵軍が一隻残らず一掃されたことを
知った わたしはパープルスマイルに
呼び掛けた
『また君に救われてしまった。あり
がとう。この礼はまたするからね』
『美味しい彗星を七十体ほど贈って
くれればそれで十分だよ。親愛なる
クリストファー。どこへでも逢いに
いくから』
恒星はニッと笑ったように一瞬輝き
を増し そしてさっそうと断層の奥へ
と消えていった うーむ彼はいつも
企画外れにでかいし 格好いいなあ