霧霜の運び手
年が圧し詰まってくる感覚が
ことしもすこしずつしてくる
こうした時節にあたま過ぎるのは
20年前におとずれたことのある
釧路市の臨海鉄道である
あのまちは秋になるとひんやりして
あさがたは濃い霧にすぐ包まれて
びっくりしたものだ
まっしろ白盲で何も見えなくなった
そのなかを 海際の断崖したを
石炭輸送列車がカタカタおとをたて
て運しっていった
残念なことにその専用線路は
三年も前になくなってしまった
とのニュースを目にした 勿体ない
こうした憂いの積りやすい時分は
夢の仕業と見まがう霜の鎖に噛まれ
つつも鴎もめの切なささそう眠り歌
になんの力も入ずそばみみ委だねて
北の港町のいざかやの片隅で
帆立や蟹を摘まみながら 只
皺皴になってみてもいいなと
いうきがしたものだ だって
うつりかわらぬものはなにも
ないのだもの その不可逆の
慈悲の余地なき法則に
ただ無力な恨らみ節を
リフレインするばかり