大英史胎動 (ビブリオテーケ)
二十世紀から二十一世紀への
じだいをささえた女傑と後世に
承たわれるであろうエリザベス
女王という日輪が西の海に沈んだ
このくにではちょうどみたび
女性首相へトップが替わった
直後だったから小説よりも
ドゥラマティックだ
シャーロック・ホウムズも予見しな
かったしシェークスピアもこれ以上
の演出は思いつかなかったろう
蔭で三谷幸喜が黒の脚本を
書いていたんじゃないかなどと
余聞な憶測すら巡らしたくなる
ふりかえればパックスブリタニカ
などといわれた時世はすでに伝承
大英帝国だ連邦だとよそゆきの
外套だけ派手に繕ってもいまや
ガワのプライドだけのスカスカ
紳士お貴族の御国柄しか残らない
それでもさらにきたのオソロシヤ
コッカの諜報員あがりのピエロが
時代錯誤なヒストリー遺そうと
ヒステリックなあやまち続けて
いるのにくらべれば伝統を
魂の礎にすえたかれらはまだ
ほんとうに騎士的
だからお先みじかそうな
チャールズ王さまにも
そのさきのウィリアム王さまにも
海の片隅から悔やみと祝いの辞を
捧げましょう
ねえ
俄わか大国にふりまわされず
その頑固な矜持を徹らぬいて!
はんたいがわに佇ずむ故き屯によ
いぎりす
霧も魔法もきっとうみにぽっかり
月きだした碧の丘を守護してる筈