南下列車
あなた どこまでいくんですか?
南下列車の車内でお下げの少女に
唐突に訊かれまゆをひそめた
『最南端です。とにかく最南端 。
岬のさらにその先にいきたい。
磯に幕けちる波頭 に問たいのです。
繰り返し繰り返し覇抗かってくる
きみはわたしの逃得ない運命かと。
さかまくうしおと対話しにいく。
いや、誤解しないで。けっして
しににいくわけではありません』
すると名も知れぬ少女はわたしの
耳元へ唇をよせてきて呟いたようだった
「……知ってるよ 」
この南下列車には 希望にむかって
昇っていく魂さんたちがとちゅうの
駅から大勢乗ってくる
みんな宿命おえてあつまってきて
わいわいわいわいわなんかやたら
タノシソー
南のそのさきの産みへと一本一本の
川の支流のように合わさって
つぎの宿膿へおもいを束ねる
一端となるのだ
気がつくと 少女は車掌さんの
コスに身をつつんでいた
「ようこそ宮沢賢治と石川啄木の
蓄ちかった潮密岱へ」