いいわけ姫
「須美子、言い訳ばっかりして
るとダメな娘になっちゃうよ」
ちいさい時分からかあさんに
繰り返し言われてきた
ちがうわ かあさん
わたし 早苗ちゃんに促がされて
あんなことしちゃったのよ
そのたびにやってしまったことの
正当な理由を主張した
そしてこっぴどく叱られた
ねえ どうして叱るの?
どうして考えてやったことのその
原因を説明しちゃいけないの?
わたしは正しくないかもしれない
けどちゃんと理由があるのよ
なんでこんなに理不尽なこと
ばっかり多いの?
しかしわたしが自我を顕現する
たびに世界はすぐ敵にまわり
わたしを残忍に糾弾し処罰した
「なんていいわけばかりする仔だ」
人前にはだかで立たされたりした
世界はいつだってわたしの敵
なんで?なんで?
どうしてわたしばっかり虐めるの?
どうして誰も理解してくれないの?
みんながんこで自分の言い分しか
興味ないの?
もっとわたしのはなしを聴いて!
おいっ
すこしは人の話聴けよお前ら!
そうやって成長してついたあだなが
いいわけ姫
わたしは誰もから忌避される
嫌われものになっていた
社会に出てからもそれは引き摺った
「いいわけするな!」
職場のパワハラ課長もただ頭ごなし
会社で言い訳禁止だとか誰が決めた
こうなったら無理解の傲慢世界と
どこまでも徹底的に戦ってやるわ
そうした堕ちる心にストップが
掛からないと感じていたある日
足の不自由な人をただ助けた
だれもが街頭で手をさしのべようと
しないのをあまりに見かねたのだ
「勘違いしないでね、あなたを
気の毒におもったわけじゃない
……そ、そうよ。つめたすぎる
こんな社会に日頃から怒りを
感じてるのよ。それだけ」
言われ馴れていないお礼を言われ
照れたわけじゃないけど
必死に言い訳を考えぶちまけて
颯爽と(ソソクサ)その場から
身をひるがえした
ふう ……でも
うん!
なんか今日のわたしかっこいい!
いいわけ姫ってあだ名ってさ
侮辱されてるようで嫌いだけど
シラフじゃやれない嫌なことを
勇気出してやるための言い訳なら
いいんじゃない?
そんなことを考えながら
普段ほとんど忘れてた微笑を
とりもどして
めずらしくこころんなかが
浄化されたようなキモチだった
あ
ここ数年間のわたしって若しかして
いろんなものが見えなくなってたの
かなあ?