100円カウンセラー
私は事業所の一総務主任だが副業で
精神カウンセルを自席で行っている
もちろん精神科医術の免許もある
来て下さる患者からは百円だけ頂く
人よんで百均お悩み相談だ
まあ定年退職前のほんの細さやかな
サービスアルバイトのようなものだ
「さて今日はどんなご相談ですか」
「ぼくはSな巨乳キャラが大好きな
ボンテージフェチなんですけど最近
甘えてくれるタレ目の妹属性も出て
きて本当はどっちがいちばん好き
なのか分からなくなってもう気も
狂っちゃう六秒前です。先生っ、
こんなぼくを援すけてください!」
私はタメ息をついた
オイオイ、また今日もコアな病症
のトンでも患者がオデマシだな
だが私はそんなホンネは尾首もださ
ずひたすらニコニコを装いながら
「それは大変お辛いことですね」
とかわしてデスクの引出しから
心理病理叢書を取り出して詠む
振りをしながら
「よしそれではショック療法と
いきましょう。毎晩寝る前に
枕元にお手持ちのスマホを2つ
ならべ、片方に元々大好きなSの
ボンテージキャラを、もう一方に
最近好きな妹キャラをそれぞれ
出して必ず両方におやすみを言っ
てそれから眠るのです。それを
1ヶ月間 必ず繰り返しなさい」
私は患者の瞳孔を覗き込んで
ぎん っとばかりに命令した
ここのところが肝心なのだ
「1ヶ月後にはどちらかの仔が
毎晩自動的に夢に出てくるように
なるはず。そちらの仔とあなたは
末まで添い遂げるはずです」
こうした療法を聴いてオタクじみた
患者はぱっと顔を耀かせた
「先生!わかりました!やって
みます」
患者が退出してから私はポカリスエ
ットをがぶ飲みしつつ やれやれと
肩をおろした
1ヶ月後今の患者が一体どんな姿で
私の前に顕れるかすこし気になるが
まあ譬え失敗していたとしていても
気に病むことにはならないだろう
しょせん100円の価値のカウンセリ
ングだしあながち徒労に終わるとも
思えない
彼にはさきほどしっかり瞳孔経由で
脳神経の伝達物質の流れを苛じくる
強烈な暗示を掛けておいたからね
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