あまてらすココロ顕微鏡
ピアノ曲でいえば好きなのは
ドビュッシーである
少年少女の時分に父のもっていた
アナログレコードを勝手に借りて
じかじかビニールノイズのする
レコード盤に装着して観賞した
そのなかでもお気に入りは
『夢』という曲だ
自身じゃピアノはとうとう
弾けなかったが
金属筋の響かせる きん とした
崇かい音階が透き通った
どこかとおくの西欧の庭園の
なかに匿くされてあるぽとりとした
泉のみなもに宝石の珠が跳ねて
弾ぢかれ綾紋となって円描いて
飛沫を散らせるイマジナリを
病むことをしらない稚い心に
謄写していたものだった
だから言い尽されている文言だが
もしも自分にピアノの鍵を自在に
撫でる才覚が努力を重ねる研鑽が
あったなら
それはジュエルソオサリイに
匹敵するものであっただろう
どこまでもやさしくて切なくて
淋みしくて でも愛おしく美しい
すんだたいきにパアルのひとつぶ
投げこむようなそんな繊細さ
どこか諦らめを含んだ哀し謳た
哀律
因律
それでもラメ貼りの器わのごとく
きらきらきらきらきらきら転がり
すべり落ち
やがて咽せび鳴きをあげて
高みへの絶唱へととどいて
深みにある膜へと届どろく
それは現実じゃない
ゆめという虚ろであることに
完ったあと今更気づくのである
現つつのわたしたちの自識
だからわれらは店せられる
その蠱毒に
大麻を呑み干すように
囚らわれ足掻く
仰向けにされた昆虫のように
昆虫
『夢』の央くではわれらは昆虫だ
宿業の燐環の内部でただ痙い攣し
孵化と形骸化を漫然とくりかえす
そこには罪みもない
https://youtu.be/pIJtGPbDKlw
純真な美の因に慄える
こころの虫メガネ
ほら おもいだして