尾道旅情回口
いま棲んでいるところとはとおくない
鎌倉よりは自分はむしろ尾道
かつて志賀直哉や林芙美子のように
住民のひとりとして急坂の昭和路地
かっぽしたこみあげ留められない紀奥
千光寺の甍波やロープウェイの宙映い
ちかじか廃止されるという渡船ふぇり。
うみのみちミズのミチ焼き牡蠣イベ驛庭
至る綴じ露裏で邂逅遭遇するちっちゃな
福 石 猫 毬像達の群霧
まあ妖怪がいても御袖天満の石段から
転げ落ちてしなないで異空に飛び込んで
もなにも星儀はないノスタルジアの雷撃
かんたんにいけなくなってしまったから
寧ろとおくはなれたからこそ
稀少のかがやきをます宝石だって在るの
反なれつつありもう会うことのない
であろう避りコメットの背中姿のように
二つ盛り上がった肩甲骨が妙に絲惜しい
凛 凛 し い
ああそうだ
ツチノコにも何処かの曲がりかどの
向こうで遭える気がするね?