織調量奏(フィルハアモニイ)姫 〜 ハアプとヴィブラフォオンの綾掛け画廊 〜
黙魚(もくな) はお寺の住職の娘
幼時から当然のように読経の際
本堂の杢魚を ポ カポ カ 殴たいて
弾ずみの音感を養ってきた
小学高学年になりコンキンカンケン
木琴に嵌まった
中学高校に入って吹奏楽部の
ビブラフォーン奏者になった
その重層に谺まして震わす奥行きのある
とおい悠るかなひびきに憑かれたのよ私
高校一年のときハープをひくあの娘
氷琴に出会った
お尻の下まで伸びた黒髪ロングと
冷たげな氷眸で無表情がちな美女だった
なのに初対面で惹かれちゃった
ひょっとしたときに飜るがえり浮わりす
る 含に羞みを含んだ微笑との 絶妙な
ギャップ萌えの虜コになったんだけどね
ソレ以上に部活動の自主練習時間に
調律と二重奏エットを共ょにするよう
になってそのか細い靭なやかなユビが
摘むぐ清涼で零慄する弦の旋律つの
透明感に沼まっちゃった罠落ちストーリ
二人は気づかぬうちに同性同士の
恋の奈落の幻界(リリイ)に螺旋ちてった
禁制に想える同性恋の世界へ滑り込み
二人の真実は暁に夕宵に尚かく煌やく
金星だけが理解するもの
片翼どうし片貝どうし
ハアプとビブラフォン
ソれらを併せ美の顕現音律へ醸成させる
のとてもむずかしい だけどふたりのあい
だの空隙を術り流れる情念の濁流が嵌ま
りにくい片ピイス達ちも再創築し 自己
回帰完結した音律紀に仕立てる奇蹟起す
部活終わったあとの静寂が支配する夜更
ふたりで謎ステリアスな廃教室忍び混み
宿直教師の巡回の目を忍すんで misty ィ
ミスティックに喋たり合い また学舎外の
うら陵で 将たまた黙魚のお寺の鐘撞堂の
縁側に列裸んで尻し掛けふたりっきりの
演奏会を楽しむ こころゆくまで
沈んで 静んで DUODUO
更け行く秋の虫達の合唱を バックオオケ
ストラに phil harmony
大団円格調な津波に呑み込まれるのも
へいき
そうやって駈け抜けたデケード(10年紀)
気がつけば二人は別々の人生をあゆんだ
黙魚 は地元ローカルでのみ知る者ぞ知る
ジャズユニットのレギュラーメンバーで
場末のライブハウスを点む々むと流れ
そのひ暮しでも縛られるのを嫌う奔放さ
住職の親父が還れと喚めくが花開くまで
決して還らないと突っ張る破天荒やさん
氷琴 は大輪花憐の二つ名持つソロメジャ
ーハーピスト モスクワやライプチヒで
名を轟ろかせサポーターらに崇まわれる
なにがあの時代のふたりの愛を分つたか
いまではだれも知らない訳あり秘しょ話
黒翠歴史の類いなんだってさ