ポエム
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元 taihoooじじい

散歩に出るとみちばたに鍔広帽子のおじ
いさんがしゃがんでにこにこと声をかけ
てきた「やあ」
ナニモノ?
「わしゃ熱帯低気圧じゃよ」
ナンダ、タダノキチガイ
「ついこの間までのう、台風10号
『サンサン』と呼ばれてたんじゃ」
ソウキタカ、コノ ニンチショー
「皆には今度もまた色々とたいそう迷惑
かけてしまったが、元気な時は若か気の
至りでの、我忘れて自制も吹っ飛んで
やりたい放題しまくり全くすまなんだ。
じゃがこんなわしらにも最低限の矜持と
埃があっての。生まれてきたからにはで
きるだけここの島嶼部の陸棚に居座って
ひとりでもまた一疋きでも多くの生命の
記憶につよく印象を焼き付けてその発生
意義を後代に遺こす。勝手なようじゃが
それがわしらのコアに蓄積される量子シ
ステムに代々受け継がれる帰命コマンド
なんじゃ。わしらはどれもそのコマンド
に従属して成長し進路などおおざっぱな
行動計画を定める。その過程はいくぶん
選択淘汰的じゃがな。ワッハッハ」
ワライゴトジャネエヨ コノサイヤクメ
「そんないきりなさんな。おまえさんと
さいごにこうして話せて楽しかった。
おっとこうやって顕現していられるのも
そろそろ時間のようじゃな。まあ、おま
えさんたちの詠む時系列、令和6年夏に
長い時間かけて悩ませてやった事実はパ
リ五輪のタグとともにこのほしの後代の
記録に刻まれてくれるじゃろうて。では
の、このあと生まれて来る後輩や孫たち
ともあそんでやってくれたまえよ.....」

いつのまにか饒舌な熱帯低気圧じじいの
映像は褪せ 薄れて 消えていった
あとには一陣の暑い微よ風

そらには秋口をくちずさむヒツジ雲や
鱗こ雲たちがきままに拡げた翅ばさで
あたらしい季節のブランニュートラック
を奏で弄じり幕じめていた





24/09/02 13:28更新 / OTOMEDA



談話室



■作者メッセージ

これでこのあとはふたたび、冬の底を
目指す長がく気怠るい降だり坂か。
https://youtu.be/mJxWqrYtbyo?si=-jn7PKOdQDlCQfxt

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