藤棚のあなた・最新
藤棚を見かけると あの
過去ての
おねえさんを思い出すのさ
見掛けの慎つましさ
淑とやかさ
和風の彩りの営み
けっして艶やかじゃなく
弱さを包み込むようにし垂れてぶらん
ぶら提がり
しゃなりはなりと耳に聴えない囁さやき
たててて
おばあちゃんのように雅密そめながら
安さしい
そんな藤子さんもきがつけばいつしか
ほんもののおばあさまの領家過ぎ舞って
今ま。
終りなき夏なんてない
冬があるから夏の栄りが
闇があるからあかつきの
夜明けの目眩しさがオアシスの泉ずの
ようにこころの溜め凹に染み透ほって
濕るをし濯らい和がれてくるんだね
ねえ藤子さん
とぼくはまだ
仏壇の前でやがて家内となり
喪ったひとの遺影に
線香の烟りに咽び哭き永がら
孑とり 噺たり 掛けている
Air Wisteria を
演どりながら
見かけるひとらに何と
ゆびさされようともね