ポエム
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熱川回鏡廊
かなり以前
まだ母が健きていたころ
東伊豆のあたがわ温泉に
つれていったことを最近
よく思い出す

磯辺に面した古いホテル
客室の窓ガラスごしに
ベランダのほうから
よどおし魚ミナリが
罅びいていた
やみにマギれアジサシまで
咽せび奏くかの夜う 和して

黒 ろ い 灘
ベランダから見おろした
夜中の海面はまさに
いちまいの暗い絵画 黒画材

布団にくったりよこになると
耳や脳のおくでいつまでも
浪の轟ろきやまず 静まづ
泪がひっぱられて滲んだ

 雷雷癩儡 喇喇蕾 螺蠡

   蠡磊 蠡磊

蒲団のなかはうおきゆれて
一艘の仮想のフネとなって
なみに外そばれ 夜れ続ける
幻映が泡くあとを引き摺った

洋みまにときおりかすむ
伊豆先の縞まじま つっつう
母が跡形もいなくなったあと
ときどきあの夜のベランダで
母のこころと対話したくなる




  




日が終のうみが 白んできたら
そこは端じ毬りの 思 環 理
すすむべき舳さきは

そちらの岬わにきっとあると
憶もえるのだろう




21/06/16 03:39更新 / OTOMEDA



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