夏色の予感
国立公園の石畳
繋ぐ手と散歩道
陽炎の 立つかの
熱量にうながされ
辿り着いた
大樹の元で
喉に潤う水
木洩れ日に
つつまれた二人
六月の風に揺れる
四つ葉のイアリング
私のうつむいた
大きな麦わら帽子に
優しい彼の手が
髪 たぐりよせ
引かれたこの身の
かかとが浮く時
麦わら帽子の中の
君の瞳に私がいたの
その瞬間
音と光は
息を飲み
時と風は
歩みをとめた‥
唇がゆっくりと
甘く切なく
濡れてゆく
震えた吐息は
麦わら帽子と共に
夏色の風に流されて
広い胸へと
沈みゆき
こぼすことなく
あますとこなく
つつまれて
つつまれて私‥
時よ
お願い
あと少しだけ
このままで
このままで
いたいの‥
25/11/09 18:08更新 / 老女と口紅。