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一夜は旅の如く
一夜は旅の如く/



もぅ幾日
過ぎたのだろう

夜明け前には
辿り着けるのか

長い道のりを‥
ようやくここまで‥

荒い息づかいは
 誰の為でもなく

口の渇きは

重ねたことで
潤いを取り戻す。

這うように

ゆっくりとも
その歩みは堅実に

満月の照らす

 一つ山を越え
   また一つと
    山を越えた。

滑り落ちる様に

行く先の谷は深くも
緩やかな大地は温かい。

ようやく

土手の草むらを
 掻き分けながら
  見つけた 道筋。

満ち足りぬ
時を待たずに

重い岩戸が開かれた時
枯渇した滝は溢れ出す。

旅人は

歓喜を歌い喜びに打たれ
酒を飲み無心に踊り狂う。

向かう所はただ一つ

光りさえ届かぬ
この洞窟のその奥へ。

果てしのない道は
 ただ いたずらに
  体力だけを奪い取り

どん欲にしがみ付く魂と
 共に登り詰めたこの頂上。

開放された精神は

疲れ果てた肉体と
静かに静かに横たえて。

一度の深呼吸を

白々と明けて行く
幕引きと引き換えに

とても深い眠りを

とても深い眠りを手に入れ
安らげる旅人は安堵を枕に

この
一夜の終焉を


おごそかに
 迎え入れた。



一夜は旅の如く/






   
20/08/14 08:00更新 /  老女と口紅。



談話室



■作者メッセージ
作:2009年03月04日(水)

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