ポエム
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花のない庭
妖精に会った

通りがかったよその庭先
やわらかなクリーム色のバラに
目を惹かれ足を止めた

幾重ものまあるい花びらが
愛らしく美しい

じっと見ているとピンク色の花弁から
小さな妖精が顔を出した

寒いね

そっと囁くような声

私も小さな声で囁く

ほんと寒いね

妖精と話すときは大きな声を出しちゃだめよね
驚いて隠れてしまうから

あなたは咲いたばかりなの?
とてもきれいよ

ありがとう 見てもらえて嬉しい

妖精はほんとに嬉しそうに笑った
とてもかわいい

仲間は前から咲いてて私が一番あとよ
もう少ししたらみんな萎れてくるわ

そうなの?じゃあ今日会えて良かった
普段この道は通らないのよ

妖精はちょっと考えて言った

偶然だったのね
それじゃ もう会わないかな
もっと見てほしいけど

妖精がさみしそうに見えて思わず訊いた

来年暖かくなったらまた咲くよね?

うん、私を覚えてたらまた来てくれる?

妖精は目を輝かせておねだりするように言った

かわいい

私は周りを見まわしてこの場所を
覚えておこうと思った

忘れないよ ここであなたと会ったこと
会いに来るから来年も咲いてね

妖精はにっこり笑って頷いた

二人で再会を約束してまたねと言って
歩き出す

角を曲がるときふと戻ってもう一度
見たい気持ちにかられた

今会ったあのバラが今年最後に見る
バラかもしれない

偶然の出会いがとても貴重に思えた
明日もう一度来てバラの精とお話しようか

あの庭が花のない庭になる前に




20/12/13 11:50更新 / 香弥



談話室



■作者メッセージ
花を見ると心が和むのは
やはり妖精のしわざでしょうか

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