ポエム
[TOP]
望郷
あなたの横顔が浮かぶ
故郷の友だちの話をしたときの
時は知らぬ間に過ぎてしまうね
ゆっくりだろうと
急ぎ足だろうと

幼少期
青春時代
熟した季節
黄昏のとき
全てを越えたあなたがいた

青春の一歩手前で離れた
故郷の山はきれいでしたか
小川のせせらぎは涼やかでしたか
懐かしいその景色はいつも
あなたの心にありましたか

年月は凝縮して
生まれたままの
光があなたを包んでいた
遥かな原点に帰るように
現(うつつ)の心は薄れていっても

ねえ
目を閉じると少年のあなたが
浮かぶよ
川で無心に遊ぶ姿
兄弟や友だちと一緒に

一度だけ連れて行ってくれた
あなたの故郷は
山、ただ山の景色だった
あの景色をもっともっと見たかったな
あなたと話が出来るように

あなたはさみしいとも
懐かしいとも言わなかったね
もうみんないないんだ
俺が一番長生きだ
そう言うだけで

あなたが見せていた
無垢な横顔
過去も未来もなく
子どものように純粋な顔
ただ今を生きることに懸命なだけの

あなたが言わなかった
言葉が聞こえるような気がする

帰りたいなぁ

一度も聞かなかったけど
そんな気がする




23/10/03 22:27更新 / 香弥



談話室



TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c