ポエム
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同志の桜
ひらひら咲いて
はらはら散って 
今年もきれいだ
同志の桜

初めて会ったのは冬空の下
まだ若い木だったあなたは
ひょろりと痩せて枝も細かった

社屋を背に佇む姿は
小さく頼りなげで
通りすぎるたび思ったよ
早く大きくなって
たくさん花を咲かせてね

あれから何度も春が来て
あなたはずいぶん成長した
かわいい花が私を見つめて笑うから
あなたと過ごした年月が
よみがえって瞼に浮かぶ

少しずつ空に向かって伸びた枝
毎年増えた花の数
薄紅色に咲いたあと
浅黄の新芽から緑の葉へと
生い茂ってやがて紅く色づいた
冷たい北風吹く頃は固い蕾が
寒さに負けず春を待ったね

そんなあなたが
とてもとても好きだった
疲れた朝あなたを眺め
いつも さあやるぞって
元気をもらっていたんだよ

ずっと一緒にいたいけど
こうして眺めることはもう無いの
明日から私はここには来ない

まるで卒業生のような気分
仕事に励み仲間と笑いあった
職場を離れるのはさみしい
だけど最後の日に
青空の下満開のあなたに会えた

これからあなたは
もっともっと大きくなって
強く美しい姿で
通る人を励ますのでしょう

ひらひら咲いて
はらはら散って
今年もきれいだ
同志の桜

ありがとう 桜さん
とてもとてもきれいだよ

ありがとう
さよなら




23/03/31 20:56更新 / 香弥



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