ポエム
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季節の声を聴きながら
キンコン
花時計が正午を知らせる
きれいな鐘の音が奏でる
あのメロディー

誰かさんが誰かさんが
誰かさんが見つけた
小さい秋見つけた

私も秋を見つけに来たの
広大な公園にひとり来ると
ちょっとさみしい気がするけど
かわりにとても自由

こんな気持ちのいい日は
気の向くまま森の動物のように
あちこち歩きまわりたい

木漏れ日が小道に揺れて
私の行く手を素敵な水玉模様に
染めている
カサカサ カサカサ
踏みしめると聴こえるのは
落ち葉の笑い声

たくさんの大樹が並ぶ散歩道
幹に掛けられた札を見ながら進んだ
ブナの木 ナラの木 カツラの木
緑と黄色の屋根の下そぞろ歩けば
深く垂れた枝に囲まれて
まるでトンネルを抜けるよう

ぐるりと一周した頃には
さみしさは消えて
木々の息吹きを
体に感じるようになった

少しひんやりした木陰から
明るい噴水広場を眺める
家族連れの楽しそうな歓声
ベンチに座る人の癒やしの吐息
飛沫とシャーッという涼しげな水音が
空に向かって飛んでゆく

穏やかな景色の中の
私もそのひと欠片
ひとりだけどひとりじゃないの
風と友だち
空と友だち

自然と人がいる
同じ空間で
自然と人が溶け合う
人は自然を味わい魅力を語るけど
自然も人を見て話しかけてるかもしれないね

来てくれてありがとう
ゆっくりしていって
時間は気にしなくていいよ

私の細胞に語りかける
静かな声
時は今だけゆるやかで
葉っぱのざわめきも心地よい音楽

もうすぐこの世界はきらめく晩秋へ
荘厳なフィナーレに向かう
その後は薄日と枯れ葉色の
長い冬

だから今日は光を浴びていよう
風を感じていよう
今だけの季節の声を聴きながら




22/11/07 14:42更新 / 香弥



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